歯科矯正用アンカースクリューについて ④

こんにちは。福山市福山駅前の歯列矯正専門クリニック、イロドリ矯正歯科です。

今回は、歯科矯正用アンカースクリュー(TAD)を用いた前歯部開咬の治療についてお話ししようと思います。今回で第4回目となります。バックナンバーは以下のリンクよりご覧ください。

不正咬合の中で、臼歯でしっかり噛んでも上下顎の前歯が当たらず、隙間があいたままの噛み合わせのことを開咬(かいこう)といいます。
成人の前歯部開咬は、もっとも治療が難しい不正咬合の1つであり、重篤なものは外科的矯正治療の適応ととらえられてきました。
従来、軽度から中等度の前歯部開咬に対しては、小臼歯抜歯、ハイプルヘッドギア、マルチループエッジワイスアーチワイヤー、顎間ゴムなどで、臼歯の圧下と前歯の挺出による治療がされてきました。このような治療法では、前歯部被蓋は改善されますが、大臼歯の絶対的な圧下は困難であるため、オーバーバイトの改善は上下顎前歯の挺出によるところが大きく、骨格的な改善はあまりみられませんでした。また、前歯の挺出は、ガミースマイルや臨床的歯冠長の増大など、審美的な問題となるのみならず、術後の後戻りの原因となるため望ましくありません。

一方、アンカースクリューを用いた場合、臼歯部に植立したアンカースクリューを絶対的な固定源として大臼歯を圧下することで、下顎骨を反時計方向に回転させ、前歯の挺出なく被蓋を改善し、さらに顔貌の改善をはかることが可能です。頬側歯槽部の付着歯肉部に植立する例であると、臼歯部のみをセクショナルアーチでレベリングした後に臼歯部頬側へスクリューを植立し、エラスティックチェーンを用いて臼歯を圧下します。このときの注意点として、頬側からの圧下力によって起こる臼歯の頬側傾斜を防ぐため、第一大臼歯の口蓋側あるいは舌側にリンガルアーチ、トランスパラタルアーチ、クワドヘリックスなどを装着する必要があります。また、付着歯肉の幅が狭い症例でスクリューを付着歯肉部に植立すると、スクリューヘッドがアーチワイヤーやブラケットに近接することがありますが、この場合はアーチワイヤーを咬合面側にベンディングし、スクリューヘッドとの距離を大きくすることで圧下力を付与できます。頬側と口蓋側にそれぞれスクリューを植立する場合には、臼歯の頬側傾斜を防ぐための舌側の補助装置は必要ありません。このメカニクスは、前歯部開咬の治療のみなず、咬合平面傾斜の改善や補綴前矯正など片側の臼歯のみを圧下したい症例で特に有効です。
臼歯を圧下しても、健全な歯周状態であれば臨床歯冠長は維持され、歯肉溝が深くなることはありません。これは臼歯の圧下とともに歯周組織のリモデリングが起こっているためです。また適正な矯正力を用いれば、臨床的に問題となるような歯根吸収もみられません。

スクリューの植立部位の決定に際しては、まず、セファロトレースをもとにVTOを作成し、適正な前歯部被蓋関係を得るために必要な臼歯の圧下量を算出します。その圧下量を確保することができる部位について、付着歯肉の幅および歯槽部の唇(頬)舌的な幅、歯根間距離や皮質骨の厚さを、エックス線写真やCBCT、口腔内診査模型分析を用いて総合的に診断します。前歯部開咬の治療のために高頻度に植立される部位としては、頬側歯槽部の付着歯肉部、口蓋側歯槽部または正中部、頬側歯槽部の可動粘膜部、頬骨弓基部が挙げられます。

さらに、アンカースクリューを用いることで、従来であれば手術適応の症例でも、手術をすることなく治療をすることが可能なことがあります。
ある研究で、骨格性Ⅰ級(正常)またはⅡ級(上顎前突)の重篤な前歯部開症例において、スクリューまたはミニプレートを固定源として治療した群(TAD群)と上下顎同時手術(LeFortⅠ型骨切り術および下顎枝矢状骨切り術または下顎枝垂直骨切り術)で治療した群(外科矯正群)の治療結果を比較したところ、両群ともに約7mmのオーバーバイトの増加が得られ、前歯部開咬の改善と前顔面高の減少を認めました。しかし、歯の移動様相は2群間で大きく異なっており、TAD群では3.6mm大臼歯を圧下させた結果、下顎骨が反時計方向に回転して、前顔面高が4.0mm、下顎下緑平面角が3.3°それぞれ減少し、上下顎前歯の挺出はほとんど認めなかったのに対して、外科矯正群では、上顎骨の圧下により前顔面高が3.8mm減少しましたが、上下顎前歯が4.6mm挺出していました。
また、臼歯圧下量と下顎下縁平面角の減少、オーバーバイトの増加について相関関係を調べたところ、大臼歯を4mm圧下すると下顎下縁平面角が約4°減少し、オーバーバイトが約7mm増加するという研究結果がでています。個々の患者さんの顎顔面形態の影響を強く受けるためあくまで参考ですが、適切なオーバーバイトは2-3mmのため、上下顎臼歯を計4mm 圧下できれば、オーバーバイト-5mmの前歯部開咬症例が治療できるということになります。
これらのことから、骨格性Ⅰ級およびⅡ級の前歯部開咬では、TADを用いた矯正歯科治療は外科的矯正治療に比較して簡便に、前歯の挺出の少ない良好な治療結果が得られる可能性が示唆されています。
ただし、重篤な骨格性Ⅲ級(下顎前突)の前歯部開咬症例では、臼歯の圧下による下顎骨の反時計方向への回転の結果、オトガイがさらに前突し、側貌の悪化を招く可能性があります。このような場合は、外科的矯正治療が第一選択と考えられ、注意が必要です。

当院では、精密検査で採得した資料を分析し、それぞれの患者さんに最適な治療をご提案しています。
歯並びのことで気になることがある方は、ぜひ一度、ご相談にいらしてください。お待ちしております。

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