こんにちは。福山市福山駅前の歯列矯正専門クリニック、イロドリ矯正歯科です。
本日は、歯科矯正用アンカースクリュー(TAD)についてお話ししようと思います。
アンカースクリューの選択
アンカースクリューは、チタン合金でできた歯科矯正用の小さいネジのようなもので、植立初期にはその維持力を周囲骨との機械的な嵌合力によって得ています。したがって、スクリューの直径については、スクリューの直径が太いほど維持力が大きく、機械的な強度が増し、破折しにくくなると考えられます。
しかし太ければ太いほどいいかというとそうではなく、直径が太いほど、過剰な埋入トルク(スクリューを入れるときの力)によって、スクリュー周囲骨の微小破折や熱による組織変性を起こしたり、歯根との近接を起こしたりして脱落率が高くなるという欠点があります。
また、スクリューの長さについては、歯根とスクリューの接触や、上顎洞や鼻腔への穿孔を避けるためには、適切な長さのスクリューが適しているとされます。その一方で、下顎臼後部など粘膜の厚い部位にスクリューを植立する場合には、ヘッドが粘膜下へ埋没するのを防ぐために長いスクリューが必要です。マルチブラケット治療において歯の移動に必要な荷重は200g以下とされており、この矯正力に対してスクリューが固定源として機能するためには、骨内に5mm以上埋入される必要があります。よって、それに歯肉・粘膜の厚さを加えた長さが適正なスクリューの長さとなります。
口腔内は部位によって歯肉、粘膜、皮質骨の厚さに違いがあるため、その植立部位の特徴に合わせたアンカースクリューの選択が重要になります。
スクリュー選択の一例
上顎 | 植立部位 | 直径 | 長さ |
| 前歯部 | 1.4mm | 5mm |
| 臼歯部頬側 | 1.4mm | 6mm |
| 臼歯部口蓋側 | 1.6mm | 8mm |
| 口蓋正中 | 1.6mm | 5mm |
下顎 | 前歯部 | 1.4mm | 5mm |
| 臼歯部頬側 | 1.4mm | 6mm |
| 臼後部 | 1.6mm | 8-10mm |
アンカースクリューの植立方法
アンカースクリューの植立方法には、スクリュー植立前にプレドリリングを行うセルフタッピング法と、スクリューで骨に直接穴をあけるセルフドリリング法の2種類があります。
セルフドリリング法ではセルフタッピング法に比較して大きな埋入トルクが必要となるので、植立時のスクリュー破折を防ぐために直径の太いスクリューを選択する必要があり、臨床的には直径1.4mm以上のスクリューが推奨されます。
一方、セルフタッピング法を用いる場合は、セルドリリング法に比較して埋入トルクが小さくなるため、細いスクリューの植立も可能です。
アンカースクリューを使用することで、抜歯スペースのコントロールや、歯列全体の遠心移動や臼歯部の圧下など、従来の方法では治療の効果が患者さんの協力度に依存したり、難しかったりした治療が、予測性が高く治療ができるようになります。
歯茎にネジを刺して痛くないのかなと思われる方もいらっしゃるかと思いますが、当院では表面麻酔、浸潤麻酔としっかり時間をおいて麻酔を効かせてから植立します。植立時に多少の圧迫感はありますが、麻酔のとき以外には痛みは感じません。スクリュー自体は数分で埋入完了します。当日は少し痛みがあることがありますので、痛み止めを処方しますが、翌日以降は痛み止めを服用される方はほとんどいません。スクリュー埋入後、一週間程度はかたいものを食べたり、スクリューの周りをブラッシングすることは避けていただいていますが、特に制限なく普段通りの生活をしていただけます。
治療にアンカースクリューが必要かどうかは、検査結果を分析して診断します。
歯並びのことで気になることがある方は、ぜひ一度、ご相談にお越しください。