こんにちは。福山市福山駅前の歯列矯正専門クリニック、イロドリ矯正歯科です。
今回は、神経を抜いた歯の矯正歯科治療についてお話しさせていただきたいと思います。
まずは、基礎知識として、矯正歯科治療によって歯が動く仕組みを簡単にご説明します。
少し難しい話になりますが、ある大きさ以上の矯正力を歯に作用させると、歯の周囲に存在する歯槽骨の骨改造が生じ、歯は力の作用方向へ移動します。
一般的な原則として、矯正力が歯に加わると、歯周組織には圧迫側と牽引則という力学的環境が異なる2つの領域が形成されます。
歯と骨の間には歯根膜と呼ばれるクッションのような靭帯が存在します。歯が動く際には、この歯根膜が重要な働きをします。
力の作用方向に対応する歯根膜は圧迫され、その領域の歯槽骨は吸収される一方、力の作用方向と反対側の歯根膜は牽引され、歯槽骨の骨形成を生じ、その結果として、歯は力の作用方向に移動することができます。
つまり、歯の移動には歯根膜や歯槽骨といった歯周組織が密接に関わっているということになります。
次に、神経を抜いた歯の場合を考えてみたいと思います。
神経を抜かなければいけない理由は、深いむし歯や歯の亀裂、外傷など様々ですが、神経を抜く治療では、痛んだ神経や血管(歯髄)を除去して、根管を清掃し、 再度の感染を防ぐために根の中に詰め物をします。その後、土台をたて、被せをして治療完了です。
先ほど、歯の移動に重要なのは歯根膜や歯槽骨などの歯周組織であるというお話をしました。神経を抜く治療をした歯は、歯髄(歯の神経)こそありませんが、歯根膜や歯槽骨には何の問題もないことがほとんどですので、矯正歯科治療は影響なく受けることができるということになります。
また、矯正歯科治療における偶発症としてよく挙げられるものに歯根吸収(歯の根っこが溶けること)がありますが、神経を抜いた歯と抜いていない歯では、神経を抜いた歯の方が歯根吸収を起こしにくいという研究結果も報告されています。(American Journal of Orthodontics and Dentofacial Orthopedics
Volume 97, Issue 2, February 1990, Pages 130-134)
むかし歯の神経を抜く治療をした歯があるから、矯正歯科治療は諦めるしかないかな、とお考えだった方も、ぜひ一度、相談だけでもお越しください。お待ちしております。