こんにちは。福山駅前の矯正専門クリニック、イロドリ矯正歯科です。
今回は、歯が生えてこない時に、どのような治療が必要であるのか、ほっといていいのかについてお話をします。
歯が生(萌)えてこない状態を、埋伏歯(まいふくし)と呼びます。英語では、impacted teethといいます。
歯は、骨の中で歯になる種ができて、成長とともに硬くなっていきます。これを石灰化と呼びます。最初に歯の頭の部分(歯冠:しかん)ができ、徐々に歯の根っこ(歯根:しこん)が延びていきます。この歯根が延びる過程で、歯がだんだんと進んでいき、口の中に生えてきます(萌出:ほうしゅつ)。
この時、何らかの問題が生じて歯が生えてこない状態(埋伏歯)になってしまうことがあります。埋伏歯になるかどうかについての判断は、レントゲンを撮影し、骨の中の状態を見る必要があります。また、ある程度の期間をあけて、複数回撮影することで、歯が生える動きをしているかどうか、歯がどのような方向へ進んでいるのかを判断することが出来ます。これも、きちんとした検査・診断が必要となります。
埋伏歯は珍しくはなく、クリニックでもよく見かけます。原因の多くは、おそらく骨と歯のアンバランスです。歯の大きさが大きく、歯が乗っかる土台であるあごの骨が小さいからです。
上のイラストは、叢生(歯のガタガタ)を表したイラストです。ベンチが歯が乗っかる土台、あごの骨が小さく歯が全て乗らず、今にも落っこちそうです。ベンチが小さいわけではなく、一本一本の歯が大きい場合でも同様のことが起こります。このように、歯とあごの骨の大きさのアンバランスにより叢生が出来上がります。これは、歯が生えてから起こる問題ではなく、歯が骨の中で出来上がる過程で、すでに歯の大きさは決まっており、小さいあごの骨の中で、このイラストのような状態がすでに起こってしまっています。
このように混雑していると、生えてこようとしている歯の、生えるスペースがなく、生えてこれないということが起こります。
「埋伏歯はどのような問題を起こすの?」
埋伏歯は、歯が生えてこないというそれ自体の問題以外にも大きな問題が存在します。
新版プロフィとの現代歯科矯正学233ページ
(クインテッセンス出版株式会社)
上のレントゲンは、犬歯の埋伏歯(黄色い矢印)を示しています。この犬歯の頭の部分が、他の歯の歯根に重なっていることがわかるでしょうか。埋伏歯は、歯が生えてこないだけではなく、他の歯にも影響を及ぼす可能性が高いのです。
このレントゲンだけでは、情報が不足しており、本来であればCTを撮影し、三次元的な位置関係を確認する必要があります。
これを放置すると、他の歯の歯根を溶かしてしまったり(歯根吸収)、他の歯の位置や傾きを変えてしまったりします。
そのため、埋伏歯は発見されたら治療が必要となります。
「埋伏歯の治療」
それでは、どのような治療が必要となるのかを説明していきます。
まずは、精査のためCTの撮影が必須です。CTの情報がなければ、安全な治療は不可能です。3次元的な位置関係をしっかりと把握して、どのように治療していくかを計画します。
次に、外科的な処置です。埋伏歯の位置関係によってどのような処置が必要になるかが変化します。浅い箇所に埋伏している場合は、歯茎(歯肉、粘膜)をめくる、もしくは取り除いてあげるだけで、埋まっている歯が見えます。しかし、骨の中に完全に埋まってしまっている場合には、歯茎をめくった後に、骨を削って歯を露出することが必要となります。
手術が終われば、次は露出した埋伏歯にボタンを接着します。ボタンは口の中の装置(ほとんどの場合リンガルアーチ )と接続し、歯を引っ張ります。ゴムやワイヤーを用いて、適切な方向へ引っ張ります。順調に動いて、1か月に1mm程度しか動きませんので、歯が埋まっている位置が深ければ深いほど、難易度は高くなり、治療期間も長くなります。
埋伏歯の治療において、注意しなければならないことがあります。歯を引っ張ったら必ず歯が生えてくるわけではないことです。歯が生えてこない原因が、前述したような歯の混雑ではなく、骨と歯が何らかの原因(過去の外傷であることが多い)によりひっついてしまっている場合(骨性癒着、アンキローシス)、埋伏歯を引っ張っても動かないことがあります。また、歯が生えてきても、形が悪かったり、歯根が短かったりと埋伏歯の状態が悪いことも考えられます。
そのため、治療計画を立案する際には、埋伏歯が生えてこなかった場合や生やしてきた埋伏歯が使えない場合の治療計画も立案しておくことが必須になります。
以上のように、埋伏歯の治療は珍しくはないものの、治療としては複雑で難易度の高い治療となります。そのため矯正専門クリニックでの、適切な治療を受けることをオススメします。
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